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余計な前書き 旅行中の天気予報が芳しくないので、計画の変更を余儀なくされた。当初の計画は、
《旅行1日目》寝台特急サンライズ出雲で島根県に入り → 三瓶山の山麓に移動 → 西の原登山口から子三瓶山・孫三瓶山登山 → 三瓶温泉に下山して宿泊
《旅行2日目》三瓶山縦走(男三瓶→女三瓶→孫三瓶→三瓶温泉) → 三瓶温泉宿泊
《旅行3日目》石見銀山観光 → 温泉津温泉へ移動して宿泊
《旅行4日目》帰京
こういう行動予定だったのだが…
もう20年近く前、夫婦で出雲、松江に旅したことがあった。そのときにも寝台列車を利用しているが、もちろん個室ではないB寝台利用だった。サンライズ出雲・瀬戸は料金設定を抑えるためか食堂車はない。自宅で夕食を済ませ、翌朝の朝食用パンとテルモスにお湯を準備し、駅で就寝前のビールを買い込んでおいた。乗車後わかったが車内販売も限られた時間だけ、自販機にはお茶とジュースだけなので、これは正解だった。サンライズ出雲とサンライズ瀬戸が連結されて、14両編成とやたらに長い列車が入線し指定車に乗り込んだ。
サンライズ出雲・瀬戸はB寝台シングル個室を中心とした編成になっている。ツイン個室もB寝台のみで、ダブルデッカー車両の1階。車両通路がきれいなことにも驚くが、部屋自体も並んだベッド、ラジオ(NHKFMしか入らないが)、コンセント、ハンガー、ドアに全身用鏡、荷物置き場など設備は申し分ない。思ったより天井が高く、窮屈さも感じさせなかった。ただし新建材かと思う内装などを考えると走るビジネスホテルという趣で、豪華で贅沢な旅を演出するという感じには欠ける。スルーカーテンを開けるとホーム床と窓の下端が同じ高さなので、カーテンは半分引いておくことにした。
備え付けのスリッパに履き替えて、他の車両を見て廻った。隣のシャワー室(利用310円)がある車両を抜けると、「のびのび座席(寝台料金なし)」の車両。これは2段式フルシートで、山小屋と構造が全く同じなのが可笑しかった。子供連れ家族や若者の利用が多かったが、下段通路側はやはり落ち着かないだろう。中にも4人スペースごと?にカーテンがある。サンライズの車両の殆どを占めているシングル個室(シングル,シングルツイン,ソロ)は、日曜の晩ということもあってか空き部屋ばかりだった。
トイレ、洗面所も新幹線「のぞみ」より新設備で快適である。シャワールームは利用しなかったが、使用後の室内洗浄機能付きなので清潔らしい。
1993年にカナダに旅行した折、バンクーバーからジャスパーまで乗ったVIA-RAIL(カナダ大陸横断鉄道)のツイン個室の思い出話をしながら、眠るまでの時を過ごした。備え付けのバスローブスタイルの寝間着に着替えて横になったが、やはり揺れが気にかかって寝付けない。サンライズ出雲・瀬戸は電車(電動車)で、気動車が客車を引いているトワイライトエキスプレスやカシオペアとは揺れ方が違うらしく、レール連結部分でのガッタンゴットンという揺れはないのだが、電車特有の横揺れを感じた。電車好きの夫によると、「ブルートレイン」とは気動車の夜行寝台列車(濃紺の車体)のことで、電動車のサンライズはブルートレイン(車体はベージュとワインカラーのツートン)と言わないそうだ。
沼津を過ぎてからしばらくして眠りに落ちたが、大阪駅停車で目が覚めたりで眠りは浅く、5時半には起きてしまった。夫は熟睡していた。窓から朝日を見たりしているうち岡山到着。ここでサンライズ瀬戸を切り離した後、倉敷から伯備線に入り電車は山間部を走る。晴れ間も見えていた空が山陰に近づくにつれ雲が低くなってきた。伯耆大山駅通過の前後では必死に窓の外を眺めたが、大山は姿を見せてくれなかった。
出雲市駅から山陰本線の快速アクアライナーに乗り換えて、10時半過ぎに大田市駅着。寝台車乗車中に携帯電話のiモードで天気予報を調べたら、午後の降水確率50%との予報。三瓶山へ移動して登山するのをやめて、石見銀山町並み保存地区(大森)の観光に切り替えた。
コインロッカーにザックが入る大きさのロッカーが無いため、石見交通のバスセンター(バスセンターとは名ばかりの、寂れた感じの単なるバス乗り場に過ぎないが)のお土産店にお願いすると快く引き受けてくださった。例によってバスの本数が少なく、やむを得ずタクシーで大森地区へ。
資料館前でタクシーを降りて、まず資料館を見学。入館料500円分しっかり見学しようと言うわけでもないが、じっくり見学しすぎて後の時間が足りなくなる羽目になった。
町並み保存地区とはいえ、そこに人が住まい生活している地区であり、資料館近くにある土産物店と食堂以外はあまり観光地然としていないところが好ましい。地区の奥にある銀山史跡まで行き見学する時間がなさそうなので、菜の花が咲く小川にかかる橋を渡り、岩山の上に建つ寺に参り、ただブラブラと歩いた。
大森一の豪商「熊谷家」(国の重要文化財」)が現在保存修理中だったのが残念だが、郵便局も周囲とマッチする建物だったり(「石見銀山大森郵便局は日本一長い名前の郵便局です」の看板あり)、自販機さえ写真の通りで、町並みを眺めるだけで充分楽しい。製造販売のお菓子屋さんをのぞくと試食用のお菓子が置いてある。お店の人が居なかったが、失礼してつまんだらなかなか美味しかった。
昼食は目に留まったお蕎麦屋さんに入り、名産の三瓶蕎麦を注文。気が利いた雰囲気が良い和風のインテリアと、テーブルの上に置かれた感想ノートの書き込みから味に期待。運ばれてきた二色蕎麦は十割蕎麦と二八蕎麦のセットで、本わさびと鮫皮のおろしが添えてあり、湯呑茶碗の蕎麦湯つき。蕎麦の香りが豊かに香り、きりりとしまった美味しい蕎麦に満足。
五百羅漢の石室寺羅漢寺を見学参拝した。拝観料500円を払って道路反対側の崖の石窟に行く。銀山で働いていて亡くなった人々の霊を供養するため、およそ250年前に作られたものだとのこと。羅漢たちの未だ菩薩に到達しない人間臭い表情、苦渋に満ちた顔、ヘラヘラ笑っている顔、寂しげな顔。五百羅漢を見る都度に興味深いと思う。
出口に向かうとおばさん二人組みが出口から入ってきて、石窟の扉を開け中に入ろうとした。そのときだった。道路を隔てた向こう、本堂がある拝観受付の建物から声が…。「拝観料をお願いします!」。悪いことは出来ないのだよ、神様が、いやお坊様が見ているのであった(笑)
バスの時間を見計らい戻ることにした。途中で試食したお菓子のお店「有馬光栄堂」に戻りお菓子を購入。
和風サブレのような「げたのは」は、表面のカラメル風味が美味しい。歯で割るとカランと音がすることから「げたのは」なのだとか。「銀山飴」はあっさりとした甘みの飴の中に炒った大豆が入っている。大豆が香ばしくてとても美味しい。双方とも昔銀山で人夫や武士たちが作業中に食べていたもので、昔ながらの製法で作っているそうである。この素朴でしかも美味しいお菓子は、どこのお土産店も置いていなかった。
散策中にまだ渡してはいけない東京からの継続乗車券を、切符の回収箱に入れてきてしまったことに気づいた。後日「温泉津(ゆのつ)」に行くので、温泉津までの往復割引切符にしてあったのだ。つまり大田市駅は2日間滞在しても「途中下車」。駅員さんに訳を説明して切符を返してもらいホッと安心。
バスを乗り換え三瓶温泉に到着するまで結局雨は降らず、山歩きが出来たのではと少し悔いが残った。
※ 石見銀山町並み保存地区は2007年7月に「石見銀山遺跡とその文化的景観」の一部として世界文化遺産に登録されたので、「参考サイト」のリストに世界遺産関係のサイトを追加しました(2021年3月追記)。
6時の夕食前に2回、夕食後就寝前に3回と暇に任せてお風呂三昧。到着直後の4~5時は日帰り入浴客でかなり混んでいたが、夜はじっくり温泉を満喫できた。
大浴場から通じる露天風呂は広い岩風呂タイプ(循環)と、その奥に源泉100%掛け流しの浴槽がしつらえてある。五右衛門風呂風の浴槽はひとつは鉄釜、もうひとつは陶製でもちろん一人用。浴槽が小さいため熱めだが、体を沈めるときにザバーッと景気よくお湯が流れて気持ちが良い(笑)。そして3m四方ほどの檜の浴槽に源泉が溢れる方は、お湯加減が丁度良い。
泉質はアルカリ食塩性炭酸泉で、含まれる鉄分が酸化して少し赤く濁っている。柔らかく気持ちが良いお湯。この源泉に入ってしまうと少し塩素臭い内風呂と露天岩風呂になど入る気は失せて、以後は源泉の浴槽に直行することなった。
5時頃から雨が降り出して次第に土砂降りになった。雨は夜通し降り続き、テレビやiモードでの天気予報を何度も見ても落ち着かず、天候回復を天に祈るしかなかった。
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