余計な前書き 毎年紅葉の時期になると気になるのが小野岳であった。全山広葉樹の樹林に覆われているので、紅葉が素晴らしい。山全体が錦繍の美しいガイドブックの写真を眺めながら毎年プランを立てるのだが、湯野上温泉への電車でのアプローチの長さと夫の休暇の兼ね合いがネックになっていた。今年は紅葉の最盛期の10月半ばにはチャンスがなかったが、山麓の紅葉だけでも楽しめるかもしれないと行くことにした。

 連休の東武浅草駅は乗客があふれ、駅員の特急電車の指定席状況を告げるアナウンスでたいへんな喧騒だった。天気が悪いのであわよくば急行電車の指定席が取れるかもと、ゆっくりのこのこ出かけたものだから、もちろん指定席は取れずに快速電車の発車まで2時間近くを待たねばならない羽目になった。こうなったら電車の旅を贅沢に楽しもうと、デパート地下で豪華ヒレカツ弁当に惣菜売り場で煮しめやサラダを購入。駅のベンチでひたすら待って11時20分、ようやく車中の人となった。

 駅にあふれていた乗客は、既に前に発車する電車で日光・鬼怒川温泉方面に消えて、会津田島行きの快速は席に余裕があった。ボックス席の窓側に座り、混む前に早めの昼食とした。途中駅から隣に年配のご夫婦が座った。小さめのザックを持ちハイキングスタイルなのだが、足元は二人ともウォーキングシューズ。しかしご主人のほうはガッシリした体格にニッカーボッカーとウールのセーターで山男の雰囲気を漂わせている。お弁当を食べながらもこのアンバランスないでたちのご夫婦が少し気になった。こちらがお弁当を食べ終わるのを待って、奥さんのほうが「どちらへ登るのですか?」と訊ねてきた。小野岳へ、と答えるとお二人は今年の5月に登ったとおっしゃる。コースを問われたので「小野観音から」と言うと、小野観音からは登りがとてもきついからと、大内宿登山口から登り小野観音へ下るように勧められ、その場で計画変更。5月の雪解け直後に登った時には、小野観音辺りは一面のカタクリの群生だったとかで、その時期にも行きたくなった。

 お二人の今回の旅の目的は、会津戦争ゆかりの道の「峠越え」だそうで、前回はヤブだったとか。少しアンバランスな格好の謎が解けた。しばしの間、ご主人の情熱あふれる会津戦争についての能弁を拝聴することになった。「会津のご出身ですか」と訊くと「いえ、会津ファンです」。こういう山歩きの楽しみもあるのだな思った。

 その後も山の話や、お二人がパソコンを始めようかどうか迷っていることなど、話が弾んでいる間に電車は鬼怒川温泉に到着。殆どの乗客が下りて電車が発車すると、車窓に紅葉の渓谷美が広がった。ここからは紅葉展望の素晴らしさに声をあげるほど。川治温泉がちょうど最高の見頃で、思わず南平山にしておけば良かったと後悔したほど。実は以前にとびきり新緑が美しかった南平山に登っていて、今回もこの旅の候補に上がっていたのだが。空いた車内の両側の席を自由に行き来して、紅葉を堪能しているうちに会津田島駅に着いた。

紅葉の南平山(2003年11月)の山行記録 »

新緑の南平山(1998年5月)の山行記録 »

 会津鉄道のワンマンカーに乗り換えて湯野上温泉へ。ここからも紅葉展望列車の旅は続いた。生憎の曇天で、晴天ならば紅葉が照り映えてもっときれいだったろう。湯野上温泉の手前駅「塔のへつり」で下車し紅葉の渓谷を見てから歩いて宿まで行くつもりだったが、遅くなったので予定を変更し湯野上温泉まで乗車した。

湯野上温泉駅
湯野上温泉駅

 湯野上温泉駅は珍しい茅葺き屋根の駅舎である。夜は無人駅となる小さな駅で、観光協会のみやげ物売り場と待合室がある。待合室には囲炉裏があり鉄瓶が湯気をたてていて、お茶のサービスがうけられる。暖かい雰囲気の駅である。

11月4日 / 雨のち雪

標準コースタイム 約3時間50分

大内登山道入り口 --20分-- 登山口 --30分-- 鉄塔 --1時間10分-- 小野岳 --1時間30分-- 小野観音 --20分-- 湯野上温泉駅

 歩いたルートを地理院地図に重ねた地図です(GPSログによる足跡ではありません)。ボタンやマウスでの拡大・縮小や表示範囲の移動ができます。モバイル端末ではスワイプやピンチで操作してください。

青線は予定していた下山コースですが、実際は大内登山口からの往復ルートになりました。

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小野岳(宿の窓から)
小野岳(宿の窓から)

 夜通し降り続いた雨が上がり青空も見えてきた朝だった。朝日が渓流沿いの紅葉を明るく照らし美しい。標高の割には堂々とそびえて見える小野岳にも朝日が当たると、盛りを過ぎたといえども錦秋の山だ。

 天気予報では福島県でも会津地方だけ「曇り時々雨」になっているが、そのうち回復するだろうと考えていた。しかし迎えのタクシーが来る時間に宿の玄関を出ると、空から無情の雨がポツポツと。夫はたちまち不機嫌モードになり、中止にしてしまいたそうな顔色である。

 江戸時代の宿場が保存されて観光の目玉となっている大内宿の地域を抜けて、林道の脇の登山道入り口でタクシーを降りた時には、雨はしっかり降っていた。

〔8:45~9:10〕大内登山道入り口:晴れると信じてザックの底にパッキングしてしまったレインウェアを取り出して着るのにひと苦労。この間に既に停車していた車から単独行氏が出てきて登り出し、私達の身支度中にやってきた車も男性2人組の登山者だった。「雨が止めばいいですね」と挨拶をかわす。

登山道
登山道

〔9:30〕大内登山口:しばらく林道の脇道を行くと大内登山口の道標があり、ここからスギの植林地の中を登っていく。すぐに沢沿いに登るようになり沢の源頭部が水場である。スギ林を抜けたところで後から登ってきた2人組さんに先を譲った。この先はすぐに左手に折れなければならないのだが、雨中登山で下ばかり向いて歩くためか、先を行く2人組さんが真っ直ぐ斜面を登りつめてしまい、私達も疑いもせず後に続いてしまった。先の2人が道を失い、間違いに気がついての後戻り。雨でも周りを見ながら歩くことが大事である。

紅葉
紅葉
ブナ林の尾根道
ブナ林の尾根道

〔10:10~10:20〕鉄塔:左に階段を登りつめて左手に高圧線の鉄塔が建つ尾根に着く。晴れていれば見晴らしがよく、眼下に大内ダムと遠くに飯豊連峰が望めるとか。イロハカエデの若木が1本、透き通った赤い紅葉を残していた。ここから先はすっかり葉を落としたブナの自然林の尾根を行く。

 ゆるやかな尾根歩きは続かず、いったん鞍部に下ると結構急な登りになった。鉄塔での休憩も座ることなく一息入れただけだったため、ペースが落ちてきた。いつかしら雨に白いものが混じり、そのうちにすっかり雪に変わった。時には北風とともに雪が横殴りに吹きつけ、レインウェアを着ていても寒い。レイングローブを忘れたため軍手をはめて濡れるに任せていた私は、一時でも休むと濡れた軍手が手の体温を奪い手が痛い。軍手の下に保温性効果(発熱効果)のあるアンダーグローブをつけることにした。

小野岳山頂

小野岳山頂
小野岳山頂

〔12:00~12:20〕最後の急登の手前で先に出発した人たちが戻ってくるのに出会い、「もう少しですよ」と励まされて山頂に立った。小さな祠がある山頂は静かな佇まいで、ゆっくりできなくて残念だったが、何しろ雪と風で寒いためラーメンの昼食を作る余裕もない。下る際には寒いため、ザックの中の中間着をもう1枚身に付けた後、写真を撮るのが精一杯だった。

 天候と予定以上時間がかかったことを受けて、下山は標高差が少ない往路を戻ることに変更した。空腹を我慢して少しでも風が避けられる樹林帯に下り、パンをかじってとりあえずのエネルギー補給後再び下った。ぬかるみと濡れた落ち葉と、薄く積もりだした雪に足をとられて2度しりもちをついた。急な箇所は階段として整備されているのだが、土止め用に使われているのは木材の丸太ではなくプラスチック製の「丸太もどき」なので、濡れているとたいへん滑りやすい。

 雪が雨に変わるころ再び鉄塔に戻り、ようやく座っての休憩をとった。最後のひとくだりのスギ林をどんどん下って行く途中で雨が止み、皮肉なことに青空まで覗いてきた。登山口付近の紅葉の名残を惜しみつつ、携帯電話(通話良好)で迎えにきてもらったタクシーに乗り込んだ。

 そのまま駅に直行すれば間に合う電車があったのだが、タクシーには駅に真っ直ぐ向かわずに国道沿いにあるコンビニに寄ってもらった。帰りの足も快速電車なので、車内での夕食を仕入れなければならなかったのだ。1時間後の次の電車まで駅前の旅館での温泉入浴をするつもりでいた。ところが駅に差し掛かった時に運転手さんの「電車がいますから、間に合いますよ」の声に思わず「乗りまーす!」。

 3時半に発っても東京浅草には夜8時、帰宅は9時近くなってしまうので、乗れるものなら温泉を諦めようとの一瞬の判断であった。寒かった山頂であれほど下山後の温泉が楽しみだったのに残念である。

 生憎の天気だったけれど登山ツアーの団体は来ないし静かで落ち着ける山、小野岳はなかなか好ましい山だった。

登山データ

小野岳:標高 1383m

場所 福島県


アクセス

会津鉄道湯野上温泉駅大内宿登山口までタクシー15分


山行日 2001/11/04

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