寝台特急北斗星に乗る

7~8日目 8月4~5日 / 最終日 帰京

 倶知安駅前から羊蹄山の堂々とした姿が見える。思えばこの旅の始まりも空の上から見た羊蹄山だった。待つ人が殆どいない駅のホームで電車を待つ。

倶知安駅前から見える羊蹄山
倶知安駅前から見える羊蹄山
倶知安駅
倶知安駅

 この時間が好き。所在無げにホームの端まで歩き景色を眺めたり。自分が今、旅人なのだという実感を得られる時間。吹き渡る風が心地よい。あぁ、なんて涼しい…。蒸し暑くて人、人、人の東京に帰りたくなくなる。

〔15:30〕13時57分に乗り込んだ電車で小樽へ、20分の待ち合わせで乗り換えて16時過ぎに札幌に到着、そして17時12分に発車するブルートレイン北斗星2号に乗車する。……はずだった。電車が終点小樽駅に近づき、もうすぐ先に駅のホームが見えようとしているとき、電車がガタンと止まった。


〔15:40〕赤信号での一時停止と思っていたら、10分経っても動かない。車内にアナウンスが流れた。「小樽駅構内で送電故障、電車全線がストップして入線できません。しばらくお待ちください」。えっ!たいへん。北斗星2号に間に合う電車は、予定していた小樽15時34分発だけなのだ。時間が刻々と経ってじりじりする。電車は20分ぐらい立ち往生した後小樽駅に入った。全線運休という事情が飲み込めないまま、人の流れと共に改札出口に向かった。事故による運休を知らせる構内アナウンスが響き、右往左往する人込みの小樽駅玄関。その中に乗客の応対をしている駅長を見つけ、どうしたらよいか訊ねた。すぐ目の前のバスターミナルから出る、札幌行き高速バスに乗り換えるようにとの指示。料金の精算と寝台特急に間に合わなかった場合の対処は札幌駅でしてもらってくださいとのこと。改札を出ると目の前に長い列が出来ていた。


〔16:00〕列に並んで待っていて、もバスは一向に出ない。列の整理に当たっているバス会社の、若い女性の係員にくってかかる人もいる。JRの事故なのに突然振り替え輸送を引き受ける民間バス会社に怒っても仕方ない。心配性の夫は、もし寝台特急に間に合わなかったらどうしようと落ち着かない。「なんとかなるさ」というお気楽な性格の私が、「JRの事故なんだから発車を遅らせるに違いない」と言う。そんな2人のやり取りを聞いていた列の隣で並ぶビジネスマン氏が、「手稲山の送電線事故だから札幌駅も全線ストップ、空港まで影響が出ている」と教えてくれた。それなら、と少し安心。それにしても傍の停留所のJRの札幌行き定期路線バスの運転手が、のんびりと乗客を待っているのが解せない。JR、早くバスを回せー。

 ようやく高速バスに乗り込んだ。札幌まではおよそ1時間とか。運転手の「このバスは臨時増便なのでノンストップで参ります。札幌市街の停留所で下りる方はブザーでお知らせください」というアナウンスがあった。ひょっとして間に合うかな。ビジネスマン氏の情報も確信できるものではないし、間に合えば…。携帯電話のiモードでニュースを見るが何も出てこない。情報が欲しい。バスが高速を下りて札幌市街に入ったとたん、帰宅時の渋滞に巻き込まれた。時計を見てはイライラする。バスが停留所で停車して、乗せないはずのの乗客を乗せたりしている。え~なんでぇ。早く行けー。


〔17:15〕札幌駅着。予定通りなら北斗星2号は発車してしまっている。ともかく改札まで人を掻き分け走った。

札幌駅
札幌駅

 改札口では大勢の人が、列車の運行を知らせる電光掲示板を見上げていた。脚立に乗っている報道カメラマンとテレビクルーの前を通り抜け、流れる赤い電光文字を追った。「事故により上記の列車につきましては運転を見合わせております」「16:12寝台特急カシオペア…17:12寝台特急北斗星」。やっぱり。特急電車全てが運休していた。18時半頃に復旧の見込みらしい。

 改札付近の広場には人が溢れて座れないので、コインロッカーにザックを預けて構内のコーヒーショップへ。お腹が空いてきたが我慢。そろそろ運行再開時間になって改札前に戻って待つ。目の前の売店のサンドイッチが気になるが我慢。食堂車でのディナーを予約しているのだもの。


寝台特急北斗星
寝台特急北斗星
ロイヤルブルーに金のエンブレム
ロイヤルブルーに金のエンブレム

 入線案内を見てホームへ。憧れのブルートレイン、ロイヤルブルーの車体に金のラインとエンブレムがシック。

2人用B寝台個室「デュエット」室内
2人用B寝台個室「デュエット」室内

 個室は3月に乗った寝台特急「サンライズ出雲」より狭いが、荷物置き場が広いので気にならない。2階部分なので眺めは良い。ようやくこの瞬間がやってきたのに、発車時間がわからないので撮影もゆっくり出来ないのが残念。

 夫が牽引車(ディーゼル)を見ようとホームに下りて走っていく。そのとき「まもなく発車します」のアナウンスが。ひゃ~早く乗ってぇ。ここまで来て乗り損なったら洒落にならない(笑)

 列車は結局2時間近く遅れて、19時過ぎに札幌のホームを離れていった。

 上野駅で見かけるこの電車の、赤いランプシェードの食堂車を覗き込んでは憧れていた。で、もちろんディナーを予約しておいた。

 フレンチと懐石御膳のコースがある。食堂車は予約客のディナーが優先され、その後に普通のメニューでのディナータイムと23時までのパブの時間帯となって営業する。本来なら7時前にテーブルについていたはずで、発車してすぐに案内があるものと思っていた。お腹ぺこぺこなので「只今準備中」のアナウンスが恨めしい。本来は2回に分ける予約客を一緒にする変則の態勢が整い、食堂車グランシャリオ(GRAND CHARIOT / フランス語で北斗星)に入れたのが8時過ぎだった。

テーブルセッティング
テーブルセッティング
ワインを選ぶ
ワインを選ぶ

 遅延がなかったら4人掛けの広いテーブルだったかもしれない。ともあれ照明やステンドグラスがはめ込まれた食堂車のドアなど雰囲気は良い。ちょっと可愛いウェイトレスさんが一人で受け持つので待たされることもあった。しかし洗練された応対は一流レストランにいる気分である。

 厨房が覗ける位置だったので面白かった。シャワー室へ行く乗客の通り抜けが落ち着かなくて気分を損ねる。ドアの脇に、予約客のディナーが終了するまでは通り抜けが出来ないとの札が用意されていたので、おそらく2時間遅れたための特別措置だったのだろう。

寝台特急北斗星のディナー フランス料理コース

雲丹風味のクレープ包み海の幸サラダ仕立て
雲丹風味のクレープ包み
真鯛とアスパラのクリームスープ
真鯛とアスパラのクリームスープ
牛フィレ肉のソテー野菜のメロディー赤ワインソース
牛フィレ肉のソテー
ココナッツミルクのスープ仕立て小豆のアイスクリーム添え
ココナッツミルクのスープ仕立て

 メニューは「雲丹風味のクレープ包み 海の幸サラダ仕立て」「真鯛とアスパラのクリームスープ」「牛フィレ肉のソテー 野菜のメロディー赤ワインソース」、デザートに「ココナッツミルクのスープ仕立て 小豆のアイスクリーム添え」、胚芽パンとコーヒー。

 せっかくだからとパブの時間帯にも食堂車へ。夫はビールを飲んでご機嫌だった。

 23時40分頃函館通過。初めて通る青函トンネルまでは起きていようと思っていた。でも眠い。列車が停車している感じでふと目が覚め、ここがトンネルの中の駅「吉岡海底」かなぁと思い、また眠りに落ちた。

 4時半に目が覚めた。雨の盛岡通過。仙台で新幹線への乗り換え案内があり、急ぐ乗客が降りていった。食堂車で朝食を済ませると何もすることがない。で、恒例の列車内の探訪である。

ロビー・カー
ロビー・カー
1人用A寝台個室「ロイヤル」室内
1人用A寝台個室「ロイヤル」室内
右側にデスクとテレビ、シャワー室
2人用A寝台個室「ツインデラックス」室内
2人用A寝台個室「ツインデラックス」室内

 ロビー・カー車両には右下隅の位置にテレビ(ビデオ放映)がある。

 利用客がいなかったA寝台個室を覗いてみた。テレビがある、絵画の額まで掛けてある!当然シャワー室完備である。料金が2倍以上違うB寝台個室との差は歴然。1人用A寝台個室「ロイヤル」にいたってはこんな広いスペースが空いていてもったいない。

 全ての車両の個室、寝台を見て回り、平日なので空いていることを知る。これなら旅行代理店に頼まなくても、自分でインターネット予約が可能だったかもしれない。

 この次は「カシオペア」に乗りたいねと夫婦の会話。この次っていつ? 銀婚式記念? いやいやもっと先かもしれない。

上野駅到着
上野駅到着

〔12:05〕上野駅到着。本来なら9時40分着のはずだった。特急券に遅延による払い戻しの証明のスタンプを貰って長い旅を終えた。

 19時間の列車の旅はさすがに長かった。しかし普段時間に追われて生活しているうえ、山を歩いても日暮れや下山後のバスの時間の制約もあって「時間」が無駄に使えないのが実情。こんな無駄ともいえる時間の過ごし方こそ、「旅」の醍醐味かも知れない。


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