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※ このページのレポートは1998年の山行記録です。登山道状況は変化します。実際に登山される場合は、地図とガイドブック他の最新情報もお調べください。
3日目 4月3日 / 快晴・風も穏やか
朝から晴れ上がって素晴らしい天気になった。予約のタクシーでえびの高原にやって来たら、今回始めて韓国岳の全貌と対面できた。もうずいぶん以前に観光旅行のツアーのバスでここに来たことを思い出した。あの時はこの山に登るなど思いもしなかった。
新燃岳の火山活動による登山禁止措置が解除されていたので縦走する事にした。
標準コースタイム 6時間30分
〔8:35〕韓国岳登山口バス停出発:登山口でタクシーを下りるときに顔馴染になった運転手さんが、「山の上で食べて」と紙袋を差し出した。うれしいのだが……紙袋はけっこう重かった(笑)
彼が去ったあと中を見ると、「かるかんまんじゅう」の大きな箱入り詰め合わせと缶コーヒー2本。旅館に連泊なのでザックは日帰り並みの重さだとはいえ、思わず「うっ、これ担いで登るのぉ」と夫婦で顔を見合わせた。しかもザックに入れるのにも苦労する大きさ。運転手さんのご好意の重さを肩にズッシリ感じながら出発した(笑)
硫黄山の賽の河原の先から登山道になり、登山届を届け箱に提出して縦走の始まりだ。冷え込んだので霜柱が立ち少しぬかるむが、高千穂峰に比して歩きやすい。
後ろから登ってきた2人組に追いつかれ、振り返ってびっくり。一昨日鹿児島空港から林田温泉まで一緒で、少しお話した外国人カップルだった。聞いてみると昨日は韓国岳山頂からは何も見えず、再度登るとのこと。空身同然でダブルストックの彼らは、軽快な足取りであっという間に姿を消した。
○合目の標識を励みに登っていき、八合目あたりで振り返ると素晴らしい眺めだ。右手には青い大浪池が見える。
〔10:15~10:30〕韓国岳山頂:長い火口壁を歩き先ずは韓国岳登頂成功。
360度の展望、特に高千穂峰の眺めに息を呑んだ。高千穂峰自体は春霞がかかっているが、手前の御鉢が圧倒的な存在感で迫ってくる。昨日はあそこを歩いたのだと思うと感動した。
韓国岳火口の縁を歩くと、荒涼とした火口が眼下に見えた。途中歩く足元の小岩の陰から、水蒸気ガスがモヤモヤと噴出していて、今活動中の火山であることを再認識させられた。
〔12:15~12:25〕鞍部:火口壁から下りにかかると、計画段階から不安だったガレ場の下りだ。急斜面のガレやザレが続きブレーキを利かすために腿に力が入る。その後草付きの道になってホッとしたのもつかの間、今度は深くえぐられた凹状の急斜面の下り。えぐれた登山道の上の端を木に掴まって下る。一昨日の大雨で滑りやすい泥道はまるで滑り台。ようやく鞍部に下りたのが韓国岳を出て1時間45分後。こんなに悪路だとは思わなかった。
〔13:15~14:15〕獅子戸岳:誰もいない獅子戸岳で遅い昼食。今日もカップ麺である。今朝の旅館での朝食時にでた固形燃料が、持ってきたものより良く燃えるので頂いてきた。また持参した密閉容器に朝食の残りのおひつの御飯と味付け海苔、佃煮などを内緒で詰めてきた。(これは食中毒の心配から嫌がる旅館もある。)
英気を養って再び出発。せっかく登ったのに峠まで一気に下る。高千穂峰に向かって下って登ってまた下るのであった。制服の自衛隊員の登山隊?に出会う。訓練の一環なのかな?
そしてその後は、忘れられないほど楽しい尾根歩きだった。雄大に広がる草原と正面にそびえる高千穂峰、振り返れば韓国岳とここまで歩いてきた道のり。歩いてきた甲斐がある一級の眺望であった。景色を堪能しながら平坦な尾根道を新燃岳南端まで20分。そして最後のピーク中岳へ。
〔15:55〕中岳:中岳へ向かう途中では木道設置の工事をしていて、木材を担いで運んでいる若者2人に出会った。彼らの茶髪やピアスが山道や展望に不似合いだが、声を掛けたら爽やかな若者だった。木材はヘリで下ろした場所から工事現場まで人力で運ぶ。木材の重さは30~50キロだそうだ。
〔17:20〕高千穂河原に下山:いよいよ最後の下りである。岩場のガレた急坂にコンクリートを流して固めてあった。疲労してきていて、なかなかスピードが上がらない。高千穂河原上の遊歩道まで辿り着き、石畳の下りが足の裏にズンズン響いてかなり痛みを覚える頃、昨日も訪れた高千穂河原に下り立った。
今朝別れたタクシードライバー氏が既に迎えに来てくださっていた。下山予定は4時半頃、下山後に電話すると伝えていたのだが、時間を見計らってきてくださったとのこと。お陰ですぐに宿に帰り休むことができた。
4日目 4月4日 / 晴
帰京は夕方17:50の便の飛行機だったので、えびの高原で池めぐりの散策をする事にした。筋肉痛の足には遊歩道のアップダウンさえきついが、楽しいコースだった。
15:05発のえびね高原西鹿児島駅行きのバスに乗車、殆ど乗客なし。実は鹿児島空港への足が不便で、林田温泉からの適当なバスがない。そこで林田温泉からいつものタクシーでJR霧島神宮駅まで行き、国分駅まで電車、国分から出るバスで空港へという算段なのだ。こんなことになったのも、全て初日の大雨で予定が入れ替わってしまったためである。
そんなことを夫婦で話していると、聞いていたらしいバスの運転手さんが「鹿児島空港の前を通過するので特別に下ろしてあげる」と言ってくれた。ありがたい!
そこで林田温泉で夫が下車、タクシーをキャンセルするためにタクシー営業所まで走った(この時まだ携帯電話を持たなかった)。その間もバスは待ってくださって、そして鹿児島空港前に差しかかったとき、バス停がないにもかかわらずそっと停車した。私たちは何度もお礼を言ってバスを下りたのだった。規則違反なのに便宜を計らってくださったバスの運転手さん、お土産をくださったタクシーの運転手さんの思い出と共に九州の山旅は終った。
空港の滑走路を見渡せるラウンジからは、左から韓国岳に始まり高千穂峰と連なる霧島山の峰々が展望できた。あの山々をず~っと歩いたのだという満ち足りた思いを胸に九州を後にした。
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