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余計な前書き 今年の夏山計画はすんなり決まった。夫が白馬岳に行きたいと言ったからである。どうやらお気に入りのテレビドラマ「坂の上の雲」(NHK / 司馬遼太郎原作)のエンディングロールの映像が小蓮華山への登山道だということを知り、もう一度歩いてみたいというのが動機らしい。今年は残雪状況から推測すると高山植物の開花・見頃が平年より遅いようで、山行予定日あたりはお花畑が満開の気配だと思われた。私も白馬岳で異論はなかった。
1998年に7月25日から28日の日程で栂池から猿倉までのコースを歩いて三山縦走をしている。
で、今回は蓮華温泉から白馬岳までの往復コースで登ることにした。蓮華温泉ロッジのサイトにおいて「蓮華温泉までの林道が土砂崩れのため通行止め」とのお知らせがあったが、夏山シーズンに入る連休前までには復旧の見込みらしい。で、何の心配もせず蓮華温泉ロッジ、白馬山荘(個室を確保)、そして特急電車の予約を完了。ところが6月下旬に蓮華温泉ロッジから電話で、復旧工事が遅れてバス路線の開通は8月13日になったとのご連絡があった。別の山に変更する気も起きなかったので入山下山を栂池に変更し、なんとか山小屋の宿泊調整もできてあらためて出発の日を待った。
好天に恵まれた海の日の連休、そしてその後も、ネットでは日々白馬岳のお花畑を楽しんだ人たちの声が聞こえてくる。期待は高まる一方なのに、週間天気予報が出てから気をもむことになった。良くない→悪い→もしかしてどんどん最悪に向かう?
そして旅館のキャンセル料が発生する直前の出発3日前、逡巡の末すべてをキャンセルして行き先を変える決断をした。その週の後半は本州各地で好天にはならない予報が出ていて、晴マークがついているのは北海道だった。下調べをしなくても登山できるのは、以前登っている旭岳である。旭岳温泉に「日本秘湯を守る会会員宿」があるので電話を入れてみると、なんと3連泊が取れるとのこと。次にネットで往復の航空便の空席を見ると、こちらも滑り込みでチケットが取れそう。清水の舞台から飛び降りたつもりで高額な航空券を購入し、こうやって二転三転の末「夏山」が決まった。
※ 写真とページを増やして改訂しました。(2020年2月)
大雪山山系は懐が深く、登山道や道標が整備されている表大雪であっても山中に営業小屋がないことから、避難小屋やテント泊でのロングコースを余儀なくされる。そのなかで登山初心者でも歩ける日帰りコースは、ロープウェイが利用できる旭岳と黒岳への往復登山くらいだろう。
というわけで1998年夏の旭岳温泉をベースにした山行では、まず一日目に旭岳に登って「北海道の最高峰」を制覇。ところが山頂からの展望は、ガスの切れ間から見えた白雲岳くらいだった。翌日は朝早めに出発して姿見から裾合平を通り、愛山渓温泉へと下山した。そしてその翌日にバスで層雲峡に移動し、黒岳に登頂。1998年の夏山は全国的に残雪が少なく高山植物の開花も平年より2週間以上早く、このときの大雪山でもたくさんの花を見ることは叶わなかった。チングルマはすべて綿毛になってしまっていて、お目当てだったエゾコザクラは裾合平を過ぎた沼ノ平で少し見られた程度。しかも愛山渓温泉への下りでは終日雨天だった。実はこの辺りは、忘れられぬ思い出、しかも「けっこう悲惨な目」に遭った思い出の地でもある(^^;
今回は天気予報が的中するなら、旭岳からの展望も高山植物の花々も楽しめそうだった。「花好き」としての気持ちの上では、旭岳登山よりお花畑が楽しめる「裾合平」方面へのハイキングが優先していた。しかし一応、「旭岳→間宮岳→中岳分岐→中岳温泉→裾合平→姿見」のミニ縦走周回コース(登山地図の標準タイムで7時間30分)を、早発ちして頑張ってみるという含みも残していた。
7月28日 天候 曇り午後から雨が降ったり止んだり
北海道滞在中は「晴ときどき曇り」の日が続くはずだった予報が、旅の出発が近づくにつれ日々天気が崩れる方向にと変化していった。現地に到着してからの予報も、一日目は「曇りのち午後3時頃から雨」というものだった。悪天の本州(東日本)を脱出してきたのに、低気圧はどこまでも私たちを追いかけてくる気らしい(笑)
こんな天気では裾合平までの往復にせざるを得なかった。宿泊する旅館はロープウェイ山麓駅から、バスの停留所ひとつ手前の距離(約1㎞)離れた場所にある。前日旅館に着いてから歩いてみたら(1998年に宿泊したロープウェイ駅傍の宿「町営えぞ松荘」が、立派な山岳リゾートホテルと様変わりしていてびっくり)、上り坂なので20分ほどかかった。宿に訊いてみたら、朝食時間の混雑が落ち着いた8時半過ぎなら車で送ってくださるとのこと。裾合平往復ならゆっくり出発しても良いので、お願いすることにした。
標準コースタイム 往復 約4時間20分
GPSログによる足跡を地理院地図に重ねたルートマップです。ボタンやマウスでの拡大・縮小や表示範囲の移動ができます。モバイル端末ではスワイプやピンチで操作してください。
※ 往路の途中でGPS測定を切ってしまったため、そのポイントから先はGPSログによる足跡ではありません。そのため裾合平での折り返しポイントはアバウトです。
ルートマップ全体図は下のリンクボタンで開きます。レポートに戻るときは、ブラウザやスマートフォンの「戻るボタン」か、右下の「山行記録に戻る」ボタンで戻ってください。
〔9:05〕出発:旭岳ロープウェイは前回訪れてからの13年の間に掛け替えられていて、駅舎の設備もすっかり充実していた。この日のロープウェイ運行間隔は毎15分で、乗車10分強で姿見駅に到着。姿見駅に下り立つとさすがに涼しかった。ロープウェイから下りた人たちがぞろぞろと出口に向かうと、ネイチャーガイドさんが客達を集めて短いレクチャーをしていた。登山者というより観光客といった人たちも多いので、これは良い試みだと思った。外に出ると旭岳は全く見えなかった。
しかし遊歩道に一歩入ると、そこはもう高山でしか見られない花々が咲き乱れるお花畑だった。なんと憧れの花、エゾコザクラに早くも遊歩道入口付近でご対面。チングルマ、咲き残っていたキバナシャクナゲ、真っ白な花が密集して咲くエゾイソツツジ。コケモモやジムカデ、イワブクロ。そして薄いピンクの花のコエゾツガザクラが、信じられない規模の大群生を作っていた。
池巡りのコースに入ると、チングルマの大群生の間に延びるプロムナード。ロープウェイを下りてすぐのこんな近くで、「チングルマの絨毯」が見られるとは思ってもみなかった。地獄谷の噴煙がガスと溶けあうようにして見えるが、旭岳全体はガスに包まれていた。