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グラン・サン・ベルナルド峠に近づくと、車窓の景色が少し変わってきた。だんだん谷が深くなっていき、山肌に刻まれた歴史がありそうな道や、放牧中の羊の群れが見える。草原はお花畑になり、奇岩の下の草原でピクニックしている家族がいたりして和む。14時30分頃、グラン・サン・ベルナルド峠に到着した。
グラン・サン・ベルナルド峠(グラン・サン・ベルナール峠 / 英語では Great St. Bernard Pass)はイタリア・スイス国境にあるアルプス山脈の峠で、今でこそモンブラントンネルで楽に行き来できるが、古代から中世ではこの峠は重要な交通路であった。紀元前にカルタゴの将軍ハンニバルが象を連れて通った?とか、ナポレオンとその大軍がイタリア遠征のため越えたとか…。また標高が高いので寒さが厳しく、怪我や病気で倒れる通行者や追いはぎに遭う人が多かった。アオスタ大聖堂の助祭長ベルナール・ド・マントンがここに救護所を建て奉仕活動をしたことで、人々から敬われ「聖バーナード」と呼ばれるようになり、それが地名の由来である。また首輪に食糧や救急薬を入れた樽をくくりつけて、峠で遭難者救護に活躍したセント・バーナード犬の発祥の地でもある。いうことで、見所満載の名所なのだ。
想像していたより美しい場所で、景色に見とれながらスイス側に向かって歩いて行った。国境を示す標識の傍には検問所のような小さな建物があるが、歩行者は全くチェックはなし。イタリア側の景色を振り返ると、スイスの方が天気が良い?
「Gd.St.-Bernard 2473m」の標識と共にたくさんのセント・バーナード犬…いやセント・バーナード犬のぬいぐるみがお出迎え。おや、土産物店のウィンドウだったか(笑) 更に歩くとあちこちにセント・バーナード犬(ぬいぐるみ)がいる。で、少し登った場所にセント・バーナード犬の犬舎があり、そこでホンモノのセント・バーナード犬を見学できるそうである。
私たち夫婦はセント・バーナード犬の育成犬舎の見学はパスしたが、1000年前に建てられたホスピスの内部を少し見学した。現在はホスピスとしての他に、登山者のための宿泊施設にもなっているとのことだ。
ホスピスの脇から高台に登れるようになっていた。高いところに登って眺めるのが好きな人たちばかりが集まったツアーなので、メンバー全員登らないはずはない(笑) 少し登ると絶景が広がっていた。健脚揃いのメンバー達は山頂を目指す勢いでどんどん登って行ったが、私はこの景色で大満足。遠景のアルプスに雲がかかっているのが少し残念だ。
車道を挟んだ崖側にナポレオン・ボナパルトのアルプス峠越えについての説明らしいプレートが設置されている。車道の上に見える崖に刻まれ石垣で補強された道が、1800年にナポレオンが4万のフランス軍を率いてイタリアに向かった「古代ローマの道」の一部だ。
「古代ローマの道」のほんの一部の、さらにその少しだけを歩いてみた。幾らかワクワクしたがやはりナポレオンは現実味に乏しく、私にとっては池が一望できる方が有り難みがあった(笑)
小高い場所に建てられたサン・ベルナルドの像がグラン・サン・ベルナルド峠を見守っている。サン・ベルナルドはアルピニストの守護聖人でもあるということだ。
イタリア側のこじんまりした土産物屋でセント・バーナード犬のぬいぐるみが付いたキーホルダーを買い求めて、グラン・サン・ベルナルド峠を後にした。