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余計な前書き この夏に海外遠征(海外トレッキング)することは、夫の鶴の一声で決まった。「健康で体力がある60代のうちに行っておきたい」という思いが強くなってきたということだ。特に海外でもヨーロッパは飛行時間が約12時間と長いので、行くだけでも疲れてしまう。それで行き先はヨーロッパアルプスに絞った。
1997年夏にハイキングツアーを利用し、フランス側とスイス側のアルプス展望ハイキングをしている。フランス・シャモニーでのラック・ブラン小屋泊まりのコース、スイス・ツェルマットでのマッターホルン・ヘルンリ小屋泊まりのコースは、私たちの山歩き人生のハイライトシーンと言える、忘れられない楽しい思い出である。しかし心残りは、スイスのベルナーオーバーラント地方だった。グリンデルワルトやインターラーケン、アイガーの展望やユングフラウ観光。そしてアルプスのお花畑が呼んでいる…。
で、ハイキングツアーを催行するツーリスト各社のサイトで情報収集。企画の多さでは、海外トレッキング・登山ツアー専門旅行社の大手「アルパインツアー」がダントツの模様。ただ、以前からアルパインツアーは割合健脚向けのツアーがメインという印象が強くて、体力にあまり自信がない私は敬遠していた。他人のペースで歩くのは無理なのだ。ところがアルパインツアーにもショートハイキングやスロートレッキングが中心で、“ゆっくり歩く”というコンセプトの「ポレポレ倶楽部」というジャンルがあった。そのジャンルで目に留まって気になったのは、スイスアルプスのハイキングツアーではなく、イタリア側アルプスの展望ハイキングで、「トル・デ・ジェアン」の一部を歩くというものだった。
トル・デ・ジェアンとはイタリア語で「巨人の道」という意味であり、イタリア ヴァッレ・ダオスタ州の谷と峠をアルプスの絶景を眺めながら走る、全長330kmのトレイルランニングレース(2010年から開催開始)のことである。このトレラン大会のことは日本では「トルデジアン」と呼ばれることが多いようで、「トルデジアン」と検索するといろいろとヒットする。レースのコースはツール・ド・モンブランやツール・ド・モンテローザのトレッキングコースでイタリア側一部や、地元の人々がデイハイキングを楽しんでいるハイキングコースを走るようだ。よくよく検索をしていくと、アルパインツアーの社員さんが、ブログ(「参考サイト」のリンクを参照)でこのコースを企画した意図やツアー初回の記録を記事にしているのを発見。その写真の景色の美しさが決め手となった。「今年の夏はコレだ!」という直感を感じた私の鶴の一声で、申し込むことに決まった(笑)
実は1997年夏のヨーロッパアルプス旅行のとき、シャモニーからツェルマットへ移動する前日の自由行動日(兼天候予備日)にモンブラントンネルでイタリアに入り、クールマイユールとアオスタを観光した。これはシャモニー在住の日本人登山ガイド氏が推奨してセッティングもしてくれたからで、たまたま行っただけである。クールマイユールではあいにく天気があまり良くなくて山岳展望は得られなかったが、フェレの谷やヴェニの谷を少しだけ散策したりした。アオスタのローマ時代の遺跡群も、何の予備知識もないまま見学した。15年を経てそのアオスタ、クールマイユールを、再び訪れることになるとは…この夏まで一度も想定していなかった。
イタリア・アルプス“トル・デ・ジェアン”名峰展望ゆったりハイキング 12日間 / アルパインツアー
“トル・デ・ジェアンを歩く”企画はこのほかに、山小屋に泊まったり峠越えをして1日の歩行時間が5時間になる日もある、やや健脚向けのツアーもある。最後まで迷ったが、景色や花を眺めたり撮影する時間的余裕が欲しいことと、“ゆったりプラン”はベースとなる山麓のホテルに連泊するので疲労を蓄積しにくいと考え、上記のツアーに決めた。
ヨーロッパアルプスの夏はカラッとした晴天が続くことが多いが、今回は夏が始まったばかりの7月初旬からの入国だったので、出航直前の天気予報を見ていると天候が不安定でヤキモキした。結果としては旅程後半にいくほど快晴だったので、7月中旬以降の方が天気は安定するのかもしれない。
ハイキング時の服装は、おおむね日本の南北アルプスなどでの夏の登山用服装で充分である。このツアーでは標高3000m以上の高所展望台へ行くので、薄手ダウンのインナーパーカー、夏用フリース、手袋を持参した。晴れていても風が強いとかなり寒い。すべて山麓のホテル宿泊なので夜の冷え込みについては心配しなかった。しかしチェルヴィニアは標高2050mにあり、さすがに朝夕の冷え込みは厳しかった。
ホテルに連泊するもうひとつのメリットは、荷物整理の時間が半減し、衣類の洗濯もしやすいこと。今回利用したホテルはほとんどバルコニー付きの客室だったため、洗濯物をバルコニーに外からは目立たないよう工夫して干して出かけたりもした。またハイキングから帰った後に干しても、ヨーロッパでは乾燥していて日没が遅いためかなり乾いてしまった。旅程が長い場合、これはいろいろと大助かりである。
この旅でのハイキングでも、スマートフォンのGPS機能とアプリ「山旅ロガー」を使ったGPSログ取得を行った。
取得したGPSログを地図上にルートとして表示させるアプリ「地図ロイド」では、海外の場合Yahoo地図あるいはGoogle地図なので、山岳地帯での詳細情報は得られない。また帰国してからスマートフォンの日時設定を日本時間に戻したため、アプリ上でもログの時刻が日本時間に更新された。で、スマートフォンの時間設定をもう一度イタリア時間にしたのだが、そのログファイルをパソコンに取り込めば、やはりパソコンの設定での日本時間に更新されたりと、思わぬ手間と苦労を強いられた(笑)
ハイキング初日(第2日目)のツール・モンテローザハイキングでは山旅ロガーの起動を忘れたので、ルートマップはありません(^^ゞ
イタリア旅行の楽しみのひとつは食事である。日本人はイタリアンフードが大好きで、私も例外ではない。で、イタリアと言えばパスタやピッツァの本場だが、イタリア北西部のヴァッレ・ダオスタは標高が高い寒冷地なので、小麦の産地ではなく、従ってパスタやピッツァの本場ではない。牧畜が盛んなヴァッレ・ダオスタと言えば生ハムとチーズなのである。
ホテルのダイニングではいつも、様々な種類の生ハムとチーズがビュッフェ式で取り放題。ランチで利用した街のレストランや山小屋でも、オードブルは生ハムがどっさり。朝・昼・晩と「生ハム責め」である。しかし私は豚肉好きなので、生ハム責めは大歓迎(^^)
何を隠そう、このツアーを選んだ隠れた理由は「生ハム」だったりして(笑) 前述した1997年のアルプスハイキング旅行でイタリア・クールマイユールに行ったとき、ロープウェイとチェアリフトでモンテ・ビアンコ(モンブラン)展望地まで行った。その山腹のお店での生ハムとスパゲティの美味しさは、今でも語り草なのだった(それまでシャモニーでのフレンチに、胃が疲れ気味だったせいでもあるが)。
写真「生ハムとチーズ」:レストランで。お皿上部の白い生ハムは「ラルド」といって、ラード(豚の脂身)の生ハムである。塩味が強いがハチミツを付けて頂くと美味しい。
写真「生ハムメロン」:メロンが添えられていたのはこの1回だけ。生ハムをグリッシーニに巻き付けていただくのも最高。
アオスタ地方の郷土料理として「ポレンタ」が、メインディッシュの肉料理の付け合わせとして何度か出された。ポレンタは粗挽きしたトウモロコシ粉の蕎麦がきのような料理(参照→ Wikipedia )。小麦粉が生産できない寒冷地は当然じゃが芋が美味しい。ここではパスタはじゃが芋を使ったニョッキとなる。ニョッキ大好きの私はニコニコ。豆を煮込んでお粥状になったスープも伝統食らしく必ずメニューにあったが、これも私好みだった。ズッキーニ、ナス、パプリカなどの焼き野菜も美味しい。
ただし総じて煮込み料理は日本人には塩分が強く感じられ、北イタリア人は高血圧率が高いのでは?と心配になったりもした。
生ハム・サラミやチーズそして料理とイタリアは食事全体の塩分が強いので、塩分を抑えて作っていると言われるパンの味はやはりイマイチ。しかし北イタリア・トリノが発祥のグリッシーニはやはり美味しく、バスケットに盛られた焼きたてのグリッシーニにやみつきになった。
デザートもいろいろなフレッシュフルーツの他、ティラミスやパンナ・コッタなどのイタリアンスイーツは当然ながら美味。
ヨーロッパアルプスに行くなら、“メシうま”のイタリアが一番!
このツアーでは山小屋に宿泊しないデイハイキングだったが、コース途上に山小屋がある場合は、昼食に山小屋の食堂を利用した。ツール・ド・モンブランなどのトレッキングコース上にある山小屋のほとんどは、食堂でランチメニューを提供しているようだ。そして街のレストランと比べても遜色ない料理が食べられた。写真はクールマイユールでのグランドジョラス展望ハイキングで利用した、ボナッティ小屋(標高2022m)のスパゲティ。現代では当然ながらアオスタ地方でだって美味しいスパゲティが頂ける。山小屋のメニューでさえスパゲティもあるし、ソースのトマトソースはフレッシュで風味豊かで、やはり本場なのである。
ツアーの参加者は私たちを含め11人。若いツアーリーダー(アルパインツアー社員)が出国から帰国まで案内してくれた。メンバーの内訳は夫婦3組、単独参加女性2人、男性3人。男性のお一人が私と同年齢のギリギリ50歳代で、そのほかの夫を含む9人は60代と70代。
私たち夫婦以外の皆さんはアルパインツアーのリピーターだとのことで、皆さん、海外旅行の…「アウトドア・辺境・歩く」ジャンルの海外旅行のベテランばかりである。パタゴニアに行ったことがあるご夫婦、マチュピチュの思い出を語る単独参加女性、アラスカのカヌー川下りツアーを楽しんでいる人、既にツール・ド・モンブランを歩いたことがある女性など。今回のツアーでも隙間時間で街や軽いハイキングコースを歩くなど、実に積極的。更にはツアープランのコースに飽き足らずに、ツアーを一時的に離脱して別の長いコースを歩いたりする人もいた。
こういう人たちなので、皆さん自立していて、おまけに実に健脚なのだった。足が遅い私は頑張って付いて行くこともあったが、頑張り過ぎれば後が続かなくなる。また健脚だからこそかマイペースを崩さず、常に最後尾でちょっと離れて歩くという人もいる。ツアーリーダーさんを先頭に体力が弱い人順にオーダーを組んで歩く…というような場面はあまりなく、日を追うにつれ結構各々のペースで歩くようになっていった。始めのうちはなるべく統率しようとしていたツアーリーダーさんも最後は諦め気味のようで、メンバーの先頭グループにいたと思えば引き返して遅い私を気遣ったり、更に「何が何でも最後尾」の人を待ったりと、いやはや若いから可能とは言え、「本当にご苦労様でした!」
足が遅くても心配ないレベルだと謳っている“ポレポレ”のこのツアーを選んだのだが、参加メンバーのほとんどが健脚という巡り合わせとなって、靴マークで表示されるレベルが「靴2つ」から「靴2つ半」にアップされてしまった感がある(笑)。それでも体力がない私が予定のコースを歩き通せたのは、想像以上にコースが素晴らしかったことと、誠心誠意お世話をしてくださったツアーリーダーさんのお陰である。また参加メンバーの皆さんは豊富な話題をお持ちで、旅行中の会話が楽しかった。また旅や人生の先輩として、旅行に関することを含めていろいろな情報や助言を頂き感謝している。
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