HOME > 山行一覧 > 天狗岳(2002年9月22日)その2





標準コースタイム 約6時間20分 《自己タイム 10時間》

青字=標準タイム | 赤字=自己タイム

渋ノ湯7:50出発 …{0.40|1.05}… 8:55パノラマコースとの分岐9:05 …{0.30|0.30}… 9:35渋ノ湯・八方台分岐9:45 …{1.00|1.25}… 11:10黒百合平12:15 …{0.05|0.05}… 中山峠12:20 …{1.10|1.50}(休憩1回)… 14:20東天狗岳14:45 …{0.15|0.25}… 15:10西天狗岳15:20 …{0.30|1.00}… 16:20第2展望台16:30 …{0.20|0.30}… 17:00第1展望台17:05 …{0.30|1.05}… 西尾根分岐18:10〜{0.40|2.05}… 唐沢鉱泉20:15到着


東天狗岳を下り西天狗岳へ
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 山頂到達が2時間の遅れになったので、往路を戻るか計画通り西尾根を下るか迷った。東天狗の岩場や黒百合平からのゴーロの下りを考えると、どちらでもかかる時間は同じではと判断して、西天狗へと向かった。滑りやすいガレ場を鞍部まで下ると、西天狗岳までハイマツ帯の稜線歩きである。草紅葉やナナカマドの紅葉とハイマツの緑のコントラストがきれいだった。

紅葉とハイマツの緑の稜線
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草紅葉
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東天狗を振り返る
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〔15:10〕西天狗岳山頂:もう誰もいない西天狗岳山頂に到着した。標高2464mの西天狗岳が天狗岳頂上である。さすがに遅すぎる時間だったが、標準タイムではあと2時間の下りとなっているので、このときはまだ不安はなかった。足の遅い私たちでも日暮れの6時前には下山できると思っていた。

西天狗へ
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西天狗岳山頂標識
西天狗岳山頂標識


西尾根
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西尾根:西天狗岳を下りだすと、大きな岩がゴロゴロした下りになった。それもかなり急で真直ぐ下りる感じである。こんな岩場があることは計算違いだった。「常念チックだねー(今夏に登った常念岳のゴーロのようだ)」と言いながら、鞍部まで下りるのに苦労して倍の時間がかかった。

〔16:20〕第2展望台:少し登り返した場所が第2展望台で、雲海に南北アルプスや御嶽山が浮かんでいるのが見えた。西天狗岳では繋がらなかった携帯電話がここで通じ、夫が予約してある唐沢鉱泉に遅れることを連絡した。特別料理(しし鍋)の注文をどうするか訊かれたらしい。この時点で思わぬミスが判明。私は山行の前に標準コースタイムと自分の予測タイム、通過ポイントの到着予想時間を常にメモしているのだが、西尾根の下り所要時間のうちの40分を見落としていたのだった。それまで楽観的だったのが、このとき初めて不安を覚えた。が、まだその後の事態を予測してはいなかった。

ぬかるみの道
ぬかるみの道
 第1展望台まではシラビソの林の中の平坦な道だった。ぬかるんでいたが、岩ゴロよりはマシだ。第1展望台の標高はまだ2416mもあるのにガックリきてしまう。最後の展望を見ながら、立ったまま水分補給をしたのみで先を急いだ。こんな状況でなかったなら、展望を楽しみながらの稜線歩きが楽しめるコースなのに…。徐々に下ってはいるが尾根を下りる分岐がなかなか現れない。夫は腕時計に装備された高度計をチェックしてばかりいる。疲れと日暮れが迫ってきた不安から寡黙になってひたすら歩いた。

天狗岳 標高:2646m

山行日 2002/09/22
場所 八ヶ岳(北八ヶ岳南部
交通 JR中央線茅野駅下車バス奥蓼科(渋の湯)行き約50分
busstop終点渋ノ湯
温泉ページへ 唐沢鉱泉
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MAP コースマップ サブウィンドウを開きます
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 日没そして暗闇での下山

〔17:50〕日没:まだ手元が見えるうちにとヘッドランプをザックから取り出して装着。私のヘッドランプが点灯しない。電池切れだった。予備電池に入れ替えて事なきを得たが、山行前のチェックを怠ったのを反省。雨が降り出したがレインウェアを着なくても良い程度だった。6時を過ぎるともう辺りは薄ぼんやりとしか見えなくなった。そして薄暗闇のなかで分岐の道標を見たときは本当にホッとした。だが実はここからが試練だったのだ。分岐から10分ほど歩いたとき、前を歩いていた夫が立ち止まり「道はどっちだ?」。薄くかかるガスがヘッドランプの明かりを反射してしまい先まで届かない。足元は確かにあまり踏まれていない草地のようだった。5mくらいの範囲を登山道を探して歩き回るだけで、下りてきた方向も元いた場所さえも見失いそうだった。「こんなに暗くちゃ行動できないな」。夫が言った。

 窮地に陥るとミョーに肝が据わる性格の私は、突然シャキッとなった。夫に動かないように言い、登山道を探した。夫と違い私は高校山岳部時代に夜間登山1回と、道に迷った挙句のヘッドランプ歩行、結果としてのビバークの経験が1回ある。そのため夫より落ち着いていた。ツエルト無しにビバークしたくない、道さえ辿ることができて慎重に下りれば必ず下山できると考えたのだ。進行方向はヤブの斜面だったので危ないところだった。右手には道はない。左手は山側。夫が唐沢鉱泉に電話を入れている間、今度は地面を舐めるようにヘッドランプで照らした。あった!良く踏まれた地面。登山道に間違いなかった。

 リーダーを交代(笑) 夫に絶対に怪我をしないように慎重に歩こうと言い、今度は私がトップになり再び下山を始めた。ヘッドランプは足元から1m先を照らすと登山道を確認できた。時々木々の赤テープを探して確認する。しかし照射範囲が狭いためなかなか見つけられない。時折谷側に危険防止のロープが張ってあり、これを見てどれだけ安心したことだろう。登山道だという証拠でもあり、危険を知ることもできるからだ。登山道を整備してくださる方への感謝の気持ちでいっぱいになった。腰をかがめて歩幅を小さく摺り足で歩いても足元は暗闇、見えていればなんでもない岩で滑って何度も尻餅をついた。後ろで夫も派手に転んだ。不慣れな私たちがヘッドランプを頼りに下りるには、あまりに急で岩だらけの道だった。暗闇では地図は役にたたない。夫が持っているコンパスや簡易高度計装備の腕時計は役に立った。そしてロープや赤テープと桟道などの人工物。あとは「耳」だった。遠く下の方から沢の音が聞こえてきた。

 足の裏は痛み、何度も岩に打ち付けた膝も擦りむいているようだ。ストックに力が入るため、握りが当る手のひらと指にマメができ皮も剥け、軍手をしていても痛む。夫はかがんだ姿勢を続けて腰が痛いと言う。時々思わず木の枝を掴むため、枝に溜まった雨を浴びて頭はずぶ濡れだった。しかし不思議と暗闇に対する怖さはなかった。それどころじゃない、必死ということもあったが、やはり一人ではないということが大きかった。何も考えずひたすら歩いた。あえて腕時計も見ずに、夫にも時間を訊かずに。やがて沢の音が近くなり、その音に混じってかすかに人の話し声が聞こえた。


 無事下山

 懐中電灯の光がチラチラしていた。それから「○○さーん!」という呼ぶ女性の声。「○○でーす。すみませーん!」と大きな声で返した。明るい懐中電灯を持った男性が登って来られて遭遇した。唐沢鉱泉の方がさすがに心配して登って来てくれたのだった。それは夜8時を回った時、唐沢鉱泉前の下山口まであと2
分の場所だった。

20:15 玄関の外で女将さんが出迎えてくださった。呼んだのは女将さんで、登ってきてくださったのは息子さんだった。予約したのが女性(私)だったので、8時になってさすがに心配をされたとのこと。ご心配とご迷惑をおかけしたお侘びを繰り返す私たちに、女将さんも息子さんも非難めいたことは一言もおっしゃらず優しかった。食事を急かされて当然なのに、ゆっくりお風呂で汗を流してからでいいとおっしゃってくれた。疲労困憊のため二人とも食事もビールもあまり進まず、美味しいお料理をたくさん残して申し訳ない思いだった。

 部屋は最上階(4階)の一番奥、食堂は1階、浴室は2階、疲れた体に階段の上り下りが実に堪えた。しかし温泉に身をゆだねると疲れがほぐれていくのを感じ、無事に下山できた安堵感に浸りながら、長い間いつまでも湯船に身を沈めていた。




唐沢鉱泉

 唐沢鉱泉は廊下や食堂の天井をドライフラワーで飾ったきれいな宿である。部屋に案内されテーブルの上に見たのは見覚えがあるタッチのイラストマップだった。インターネットを通じて存じ上げているまえじまてつおさん(山旅の想ひ出)のイラストマップだ。意外な場所で知人に出会ったようでうれしかった。出版された御本『関東周辺・山旅の楽しみイラストマップ』は美しいイラストが楽しめるだけではなく、詳細な情報が満載されているので重宝している。あれ、天狗岳の章はあったかしら、と思いながら苦労したコースを振り返った。山行後にご連絡したところ、頼まれて「唐沢鉱泉周辺案内図」も作成中とのこと。再び唐沢鉱泉を訪れたとき、楽しいイラストマップがもうひとつ加わっていることだろう。(2004年3月に完成なさった唐沢鉱泉周辺案内図をご覧ください)

唐沢鉱泉
唐沢鉱泉
 翌朝、予約した9時の送迎車で茅野駅まで送っていただく。帰り道、送迎車を運転してくれた方から西尾根ルートを拓かれたお父上の苦労話などをうかがった。岩だらけの斜面の岩をひとつひとつ取り除いての登山道建設だったそうである。出発前女将さんが明るく優しい笑顔で見送ってくださった。宿の近くの源泉を見ていないのが残念だが、次回のお楽しみにしよう。

唐沢鉱泉




 反省


 西天狗岳の岩ゴロの下りでは「こんなとこ2度と来るものか」とまで思ったのだが、展望抜群のハイマツ帯の稜線が続く西尾根コースは素晴らしい。あまり歩く人がいないので静かな歩きが楽しめる。今度は日が長く高山植物が咲く夏に逆コースで黒百合ヒュッテ・唐沢鉱泉との2泊、あるいは唐沢鉱泉2泊での周回コースで訪れたいと思う。